宮島の千畳閣下の石垣
厳島神社(宮島)へ向かう表参道の途中、鹿や海に目を向けがちですが、石垣の方にも目を向けてみてください。
よくみてみると横方向に目地がとおっていない乱積で積まれています。
乱積みは安土桃山時代以降に用いられた目地にこだわらず不規則に積み上げる方法です。
そして石垣の出隅は、隅に長辺と短辺を交互に積み重ね隅の強度が高める算木積といわれる手法を用いられています。
算木積は天正年間(1573~92)に始まったといわれています。しかし、そのころの算木積の技術はまだ未完成で、偶然細長い石が手にはいったときに交互に積み重ねただけでした。そのため算木積になっていたとしても一部のみだったり、長辺が短辺の二倍より短い石も使われ、最下段に大きな堅石がつかわれることもしばしばみられます。
この隅石は、最下段には大きな石を縦に使ってあり、短辺が引っ込んで凸凹が目立ち未熟な面が残っています。いわゆるやせ石垣です。石の切り出しも技術の発達とともに100°~110°で成形され、短辺方向の引っ込みもなく整然した算木積になります。これは見た目も美しくつまれることの他に不要な凸凹がなくなることにより地震などで飛びださないなど強度、構造上の利点もあります。
そんな算木積の技術の確立は関ヶ原の戦い以降の長十年(1605)年といわれています。
その定義は、
- 長短辺比率が1:2以上であること。
- 短辺がへこまないこと。
- 成(せい)がそろうこと。
この石垣の上に建つ豊国神社(千畳閣)の歴史からも、安土桃山時代のものであることは明らかですが、石の積み方や隅石の精度からも、石垣技術の大成時期と比較検討し、築城年代の推測ができることになります。
ついつい、お城や社寺建築に目を向けがちですが、石垣の積み方に注目してみて古い建築、史跡などを散策するのもまた違った楽しみ方ができるかもしれませんね。